「野良焙煎人」が淹れるコーヒーを飲みながら、山奥の学校でまる一日のんびり過ごそう | くらす はたらく いちはら

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「野良焙煎人」が淹れるコーヒーを飲みながら、山奥の学校でまる一日のんびり過ごそうヤマドリ珈琲@TSUKIDEYA

市原のチベットと称されるほど山深い場所にある月出(つきで)地域。いくつもトンネルをくぐり抜け、山沿いの狭い道を登りきると、旧月出小学校の壁一面に描かれたカラフルな壁画が目に飛び込んできます。既に廃校になったこの小さな小学校を舞台に、2014年から芸術や食など多岐にわたるプロジェクトを展開しているのが月出工舎です。

今回紹介するのは、そんな月出工舎の一角に2019年秋から焙煎工房を構えているヤマドリ珈琲。もともと月出小学校の職員室だったカフェスペース「TSUKIDEYA」で、ハンドドリップでじっくりと淹れたこだわりのコーヒーが味わえます。のどかな里山の風景や鳥の声を背景に、ゆっくりと良質なコーヒーを飲む。そんな穏やかで豊かな時間が過ごせるカフェです。 2021.9.12/ 原麻里子

  
住所 〒290-0527 千葉県市原市月出1045 旧月出小学校
営業時間・定休日 基本土日 11:00~16:00
※直近の予定はSNSの営業カレンダーからご確認ください。
Webサイト https://yamadori-coffee.com
SNS @yamadori_coffee
Proces山奥に突如現れるカラフルな壁画。遊びごごろに溢れていて、なんだかワクワクしてきます!

2014年のいちはらアート×ミックス(中房総国際芸術祭)に、ボランティアサポーターである菜の花プレーヤーズの一員として関わっていた小野さんご夫妻。芸術祭の会場だった月出工舎での活動の際に、趣味でコーヒー豆の焙煎を行っていたこともあり、みんなにコーヒーをふるまっていたそう。それが統括ディレクターの岩間賢(いわま さとし)さんの目に止まったのが、焙煎所をつくるきっかけになったといいます。

小さな校舎の1階部分にあるカフェと焙煎工房。入り口は開放的ですぐに校庭に出られるので、気持ちよく散歩しながらコーヒーを飲むこともできます。

小野剛さん:個人的にコーヒーが好きで、遊び半分でみなさんにコーヒーを淹れていたのですが、いつの間にか焙煎所をつくることになり、焙煎機を選ぶのを丸投げされ、流れでこういう感じになってました(笑)

笑顔で出迎えてくれた小野さん夫婦。お客さんとの時間を大切にしていて、月出工舎のことやコーヒーのことなど丁寧に教えてくれ、ほっこりとしたひとときが過ごせます。

アート×ミックス開催期間外にも、本業のITエンジニアとしての業務の傍ら、継続的に月出工舎に関わっていた小野さん。2018年には月出工舎で、短期滞在しながら地域で仕事を生み出すワーク・イン・レジデンスに参加。学校に滞在しながら焙煎の技術を磨き、2019年の焙煎工房の設立を皮切りに、本格的にコーヒー豆の出荷を始めました。その後、ECショップを開設したり、マルシェに出店するようになり、そこで出会った人との関係性の中で、徐々に豆の販売が軌道に乗り始めたそう。

中深煎りを中心に、深煎りから浅煎りまで、コーヒーの「味づくり」のために、釜の使い分けや焙煎前と後の2回によるハンドピック(欠点豆の除去)など丁寧な手仕事をしています。雑味はないけれど、深みのある味にリピーターも続出!

自らを「野良焙煎人」と位置付ける小野さんは、外で焚き火をしながら手で豆を煎って、自然の中でコーヒーを飲む。そんなスタイルが理想だと語ります。

小野さん:山奥にあるから、わざわざここを目指して来てくれる人が多いんです。まち中で行列のできる店でガンガンやるよりも、お客さん1−2組でも、廃校の雰囲気や緑豊かな風景を味わってもらい、ゆっくりお話をしながら、1日のんびりと楽しめるようなカフェを目指しています。

「野良焙煎」に欠かせない道具の数々。みんなで火を囲んで、語り合いながら手で焙煎したコーヒーを飲めば、格別な時間を過ごせるはず。

そして小野さんは、コーヒーだけでなく様々な面白い取り組みもしています。たとえば、地元の人を巻き込んで地元の食材を使っていきたいという想いで月出みかんを使ったシロップをつくったり、差し入れで大量にもらった栗を使ったお菓子などもメニューにしたり。日々、試行錯誤しています。

また、ハンドピックで欠点豆を手で跳ね除ける中で要らなくなった豆を、鞄などの染め物に使うなどの工夫も、ヤマドリ珈琲の魅力のひとつ。

要らなくなったコーヒーの豆を煮出して染めた鞄を手にする小野さん夫妻。鞄によって茶色の色味もバラエティ豊かで、どれを買うか迷ってしまいます。

小野さん:今後の目標のひとつは、去年の秋に種を撒いたコーヒーの木から豆を取れるようにして、月出産のコーヒー豆を作ること。5−6年後には、たくさん採れなくても、その日来てくれた何人かが飲めるくらいの量ができたらいいなと思っています。将来的には、小湊沿線の駅にコーヒーの木を置いて、各駅の豆のコーヒーができたら面白いですね。

黄色いフルーツがなる品種、ブルボンアマレロの苗。小野さんが種から大切に育てています。数年後には月出産のコーヒーが飲めちゃうかも?

次々にワクワクするような新しい取り組みが試みられる、遊び心に溢れたヤマドリ珈琲とCafe TSUKIDEYA。たっぷりと時間のある日に、こだわりのコーヒーを片手に、月出工舎のアート作品を堪能したり、まわりの森や山を散策したり、ほっと一息つきに来ませんか?

どこか懐かしい里山の風景や学校に流れるゆっくりとした時間と、創造力が掻き立てられるようなクリエイティブな空間の融合をきっと味わえるはずです!