小湊鐵道、月崎駅。
大正時代にできたこの駅は、とてもレトロで可愛らしく、最近ではトロッコ列車の発着駅としても親しまれ、芸術祭の作品も置かれる駅。また「チバニアン」など、観光地としても多くの人が訪れます。
そんな月崎駅から5分ほど歩くと見えてくる古民家。
美しく生まれ変わった日本家屋と背後に広がる原生林が真っ青な空に映え、気持ちの良いこちらの場所が、1年半かけてセルフリノベーションし、2021年11月12日にオープンしたばかりの「このいかふぇ」です。
2022.01.14 Kaori HOSOYA
綺麗に整備された庭を横目に、玄関を開けるとまず目に留まるのは、目の前に広がる、心地のよい店内とそこに展示されている芸術作品たち。これ全部を自分たちでリノベーションしたの?!と思わず見回してしまいます。
また、入り口から進んで奥にある隠れ図書室のような個室は、一日中のんびり過ごせるような落ち着いた空間。ひとりではもちろん、大勢でお越しの方やお子さんが一緒のママたちにも喜ばれるのだそう。
そんな「このいかふぇ」をオープンさせたのはこちらの3人。
ずっと昔から古民家カフェを巡るのが大好きで、いつか自分でもカフェをやりたいと思っていた3人がひょんなことで出逢い、少しずつ物件を探すようになったのがもともとの始まり。
「“居心地のいいカフェの雰囲気と美味しいごはん”って本当に相性がいいんですよね。」と、終始嬉しそうに話す阪本さんから、カフェを好きな想いが伝わってきます。
本格的に古民家の物件を探し始めて1年、やっと見つけたのがこの場所でした。
はじめは海の見える場所でカフェを開きたいと考え、千葉県内の海近辺を探していましたが、なかなかいい場所に巡り合えなかったのだそう。そんななか、たまたま大好きだった小湊鐡道の沿線に物件があることを知り、「とりあえず見に行ってみるか」と来てみたら、この里山の雰囲気がとても良く、敷地内に湧き出る綺麗な湧き水や周りの自然環境なども気に入り、この場所にカフェを開くことを即決します。
ところが、買ったあとには大変な道のりが!
何年もの間、誰も住んでいなかったため荒れ果てた土地を整えるのは思った以上に手間がかかり、大変なことでした。敷地に生えた木を何本も伐採し、壊れた納屋を取り除くだけでも何日も要し、後にカフェとなる母屋は床を張り替えたり、柱に何度も塗装したり、漆喰を塗ったりと、全てが初めてのことだらけ。冷暖房設備が無かったため、夏は汗だくで、冬は震えながら、そして全身ホコリまみれ、泥だらけになりながらの作業が1年半も続いたんだとか。
その後、料理の研究を重ねながらメニューも決まり、やっと念願叶ってカフェがオープン。
心地よい雰囲気の中でいただく、本格的な料理はどれも本当に上品で美味しく、ちょっと贅沢で幸せな気持ちになります。
でも、その横で料理の説明をしながら、「そうなんですよ、本当に美味しいんですよね〜!」と、笑顔でうなずく阪本さんが誰よりも幸せそう。(この料理の一番のファンなんですね!)
阪本さん
「実際のところ、カフェをやるのは本当に大変なんだけど、お客様に喜んで頂けるのがとても嬉しくて、すごく楽しいんですよね。
・・・う〜ん、人生で初めてかもしれません。こんな風に夢が叶ったのって。」
最後にふっと出たその言葉は、阪本さんのカフェにかける想いが一番伝わる瞬間でした。
これからも美味しい料理と、居心地のいい空間をつくって、地元の方から愛していただける憩いの場になることを目指していきたいと意気込む、みなさん。
そんな3人の想いが詰まった「このいカフェ」。ぜひ一度、足を伸ばしてみてはいかがでしょうか?